【現場向け】タッチパネル(HMI)操作UI設計ガイド|ISO規格・安全性・ユーザビリティ

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工場のHMI(タッチパネル)UI設計の重要性

工場の生産現場で使われるHMI(ヒューマンマシンインターフェース)は、オペレーターが機械と対話する唯一の窓口です。操作ミスは製品不良や設備停止だけでなく、重大な安全事故につながる可能性があります。

にもかかわらず、「エンジニアの自己流で作った見づらい画面」や「担当者が変わると誰も操作できなくなる画面」が現場には少なくありません。

本記事では、ISO/IEC規格に基づいたHMI設計のルールと、安全性と操作性を両立させるUI設計の具体的な方法を解説します。

HMI設計に関する規格・ルール

HMI(タッチパネル)の設計には、以下の国際規格やガイドラインが関連します。全てを厳密に守る必要はありませんが、少なくとも存在を知っておきましょう。

規格番号 名称 HMI設計への影響
ISO 9241-110 人間とシステムの対話原則 HMI画面の対話設計の7原則を定義(タスク適合性、自己記述性、期待一致など)
ISO 9241-210 人間中心設計プロセス ユーザー調査→設計→評価の反復プロセスを規定
ISO 11064 制御センターの人間工学設計 制御室のレイアウトと表示装置の配置基準
IEC 60204-1 機械類の電気装置 操作盤の非常停止ボタンや表示灯の色と配置を規定
IEC 60073 表示器と操作器の色と記号 操作ボタンの色ルール(緑=運転、赤=停止、黄=注意)
ISO 13849-1 安全関連部の設計原則 安全機能(緊急停止、インターロック)とHMIの関連
ISO 7000 機器用図記号 画面上で使うアイコンの標準形

ISO 9241-110が定める7つの対話原則

HMI画面設計の最も基本的な指針となるのが、ISO 9241-110の7原則です。現場のタッチパネルに当てはめて解説します。

タスク適合性(Aufgabenangemessenheit)

画面は、オペレーターが作業を効率的に完了できるように設計されていなければなりません。必要な情報は一度に表示し、不要な入力は求めない。

良い例: 運転画面に現在の生産数・目標数・異常の有無だけを表示
悪い例: 運転画面なのに、奥の設定メニューに進まないと生産数が確認できない

自己記述性(Selbstbeschreibungsfähigkeit)

各操作要素が何をするものか一目でわかること。アイコンだけに頼らず、短いラベルを付ける。

良い例: 「非常停止」ボタンは赤地に白文字で明確に表示
悪い例: 意味不明な記号アイコンだけのボタン(マウスオーバーもできないタッチパネルでは致命的)

期待一致(Erwartungskonformität)

オペレーターの経験や常識と一致する動作であること。緑は「運転/開始」、赤は「停止/異常」という業界の慣習に従う。

ルール: 緑=安全/運転/起動、赤=危険/停止/緊急、黄=注意/警告、青=義務/指示(IEC 60073)

学習適合性(Lernförderlichkeit)

初めて操作する人でも、試行錯誤を通じて操作方法を学べること。操作を誤った場合の結果が予測可能であること。

制御可能性(Steuerbarkeit)

操作の開始と中断をユーザーが制御できること。特に自動運転中でも手動介入できること。

エラー耐性(Fehlertoleranz)

誤操作をしても重大な結果に至らない設計。確認ダイアログ、アンドゥ機能、操作の二段階認証など。

重要: タッチパネルは物理ボタンに比べて誤操作しやすい。「確認ダイアログなしで設備が動き出す」ような設計は絶対に避ける。

カスタマイズ可能性(Individualisierbarkeit)

熟練オペレーターが自分に合わせて画面を調整できること。表示項目の取捨選択やショートカット配置など。

安全設計の基本ルール

タッチパネルのUI設計において、安全は最優先です。以下のルールは絶対に守りましょう。

非常停止はタッチパネルに頼らない

非常停止ボタンは、必ず物理的な押しボタン(ハードワイヤード)で設置します。タッチパネル上のソフトウェアボタンは、画面フリーズやタッチずれのリスクがあるため、非常停止として認められません(IEC 60204-1)。

誤操作を防止する3原則

  1. 分離:運転操作と設定操作の画面を明確に分ける(オペレータモードとエンジニアモード)
  2. 確認:危険を伴う操作(位置決めの書き換え、非常停止の解除など)には確認ダイアログを必須とする
  3. 排他:同時に操作できないボタンはグレーアウトして操作を禁止する

タッチターゲットのサイズ

工場オペレーターは手袋をしていることが多いため、一般的なスマホアプリよりも大きなタッチターゲットが必要です。

  • 最低サイズ:10mm × 10mm(手袋着用時は 15mm × 15mm以上推奨)
  • ボタン間の隙間:最低2mm(誤タッチ防止)
  • 参考規格:ISO 9241-9(ポインティングデバイスの人間工学要件)

画面レイアウトのベストプラクティス

基本的なゾーニング

画面上に情報を整理するための基本的なエリア分割ルールです。

ゾーン 位置 表示内容
ステータスバー 上部 日時、運転状態(運転中/停止中/異常)、現在のモード
メイン表示エリア 中央 プロセス図、数値、グラフなど主要情報
操作エリア 下部または右端 操作ボタン、ナビゲーションボタン
アラームエリア 下部またはポップアップ 現在発生中のアラーム(最新優先)

画面遷移のルール

  • 3タップルール:目的の機能まで3タップ以内で到達できること
  • 常に「戻る」ボタンを表示:どの画面からでも前の画面に戻れること
  • ホームボタンを常設:迷ったらトップ画面に戻れるようにする
  • 画面タイトルの表示:現在地がわかるよう、各画面にタイトルを付ける

色の使い方

IEC 60073に従い、以下の色使いを標準とします:

意味 使用例
■ 赤 緊急・危険・停止 非常停止、異常アラーム、非常停止中
■ 黄 注意・警告 注意喚起、予測される異常、メンテナンス推奨
■ 緑 安全・運転中・正常 運転中、正常状態、準備完了
■ 青 義務・指示 操作が必要、確認が必要
■ グレー 無効・非アクティブ 現在操作できないボタン

HMIの実装における注意点

画面のレスポンスタイム

タッチ操作から画面反映までの時間は、0.1秒以内が理想です。0.5秒以上かかるとオペレーターが「効いてない」と判断して再タップし、二重操作の原因になります。

文字サイズとフォント

  • 最小フォントサイズ:5mm(画面上の高さ)以上
  • 推奨フォント:ゴシック体(MSゴシック、Noto Sans JPなど)
  • 重要な数値:太字で表示し、通常の1.5倍以上のサイズにする

タッチパネルの設置位置

  • オペレーターの目の高さから15度以内の範囲に設置
  • 画面の反射(ギラツキ)が発生しない位置に設置
  • 手が届く範囲(500〜700mm以内)
  • 防塵・防水(IP65以上)に対応したタッチパネルを選定

よくある失敗パターン

  • 情報を詰め込みすぎ:工場のエンジニアは「全部見せたい」傾向があるが、画面がごちゃごちゃすると緊張感が続かない
  • 色のカスタマイズが自由すぎる:各社がバラバラの色ルールで作ると、オペレーターが現場異動時に混乱する
  • 現場の意見を聞かない:エンジニアが「使いやすい」と思った画面は、現場オペレーターには「使いにくい」ことが多い
  • デモ画面だけでOKを出してしまう:実機でのタッチ感やレスポンスを必ず確認すること
  • 多言語対応を後回し:外国人労働者がいる現場では、英語・中国語などへの切り替えが必須になりつつある

まとめ

工場のHMI(タッチパネル)UI設計は、「見やすさ」と「安全性」と「操作性」のバランスが重要です。

最低限守るべきルール:

  1. 非常停止は物理ボタン(タッチパネルに頼らない)
  2. IEC 60073に従った色使い(赤=停止、緑=運転、黄=注意)
  3. 15mm以上のタッチターゲット(手袋対応)
  4. 危険操作には確認ダイアログ(二段階認証)
  5. 3タップ以内で目的の機能に到達
  6. 物理ボタンとタッチパネルを適切に使い分ける

ISO 9241-110の7原則を頭に入れた上で、現場オペレーターの声を聞きながら設計を進めてください。

出典

  • ISO 9241-110:2020 “Ergonomics of human-system interaction — Part 110: Interaction principles” — https://www.iso.org/standard/75250.html
  • ISO 9241-210:2019 “Ergonomics of human-system interaction — Part 210: Human-centred design for interactive systems” — https://www.iso.org/standard/77520.html
  • ISO 11064 “(各パート) Ergonomic design of control centres” — https://www.iso.org/standard/54419.html
  • IEC 60204-1:2016 “Safety of machinery — Electrical equipment of machines — Part 1: General requirements” — https://webstore.iec.ch/en/publication/26037
  • IEC 60073:2002 “Basic and safety principles for man-machine interface, marking and identification — Coding principles for indicators and actuators” — https://webstore.iec.ch/en/publication/587
  • ISO 13849-1:2023 “Safety of machinery — Safety-related parts of control systems — Part 1: General principles for design” — https://www.iso.org/standard/69883.html
  • ISO 7000 “Graphical symbols for use on equipment — Registered symbols” — https://www.iso.org/standard/59737.html

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