定時を過ぎても、自分だけが残っています。周りの部下はとっくに帰っています。現場の悲鳴を一番近くで聞いているのは自分だから、ここで帰るわけにはいきません。
そんな日々を送る管理職は、実は少なくないです。私自身、生産工場のワンオペ管理職として、モーター生産の現場を回しながら、チームの成果にも責任を持っています。本記事では、現場の管理職が抱える孤独と残業の実態をデータで見つめ、AIという道具がその孤独をどこまで減らせるか、私が試していることを書きます。
プレイングマネージャーという名の「孤独な罰ゲーム」
管理職の多くが、現場仕事とマネジメントを両方背負っています。リクルートワークス研究所の調査では、管理職の約9割がプレイングマネジャーであり、プレイング業務が3割を超えている人は約85%に上ります。そして、このプレイング業務の割合が高いほど、チームの業績が下がることも分かっています。
つまり、現場を手伝えば手伝うほど、本来のマネジメントに割く時間が削られ、結果としてチームが回らなくなります。その板挟みの中に、一人で立たされているのが管理職の日常です。
年上部下に出しづらい指示
私がさらに苦労しているのは、自分より年上の部下への指示です。相手の方が業務経験も人生経験も豊富だと、どう指示を出していいか分からず、つい遠慮や躊躇をしてしまいます。アルー株式会社のまとめでも、年下部下を持つ管理職の多くが「相手が年上だから話しかけたり頼みごとをする際に躊躇してしまう」と本音を漏らしています。
製造業の現場ほどこの傾向は強いです。ベテランは現場のことを何でも知っています。そんな人に、年下の自分が「こうしろ」と言います。空気が重くなる瞬間が、毎日のようにあります。
自分より先に帰る部下から「帰れないのが悪い」と言われる
もっとつらいのは、先に帰る部下から小言を言われることです。「課長、自分が帰れないのが悪いんじゃないですか」と言われたことがあります。こちらが残業してまでカバーしているのに、その姿を「自分の管理能力のなさ」として跳ね返されてきます。
これは単なる人間関係の不仲ではありません。厚生労働省の指針では、パワハラ防止法上の「優越的な関係」は役職では決まらず、業務上必要な知識や経験を持つ部下からの言動も対象になります。つまり、部下から上司への威嚇や指示拒否も、状況によっては逆パワハラになり得ます。私はそこまで深刻な状態ではありませんが、日々のストレスとして確実に積み重なっています。
思い詰めるほどこの状態だった
正直に書きます。私も、この状態に思い詰めたことがありました。帰れない自分、言えない年上部下、小言を言う部下。すべてを自分の胸の中に抱え込んで、夜だけが長くなります。
データを見ても、この苦しさは私だけのものではありません。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、メンタルヘルス不調で連続1ヶ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%に上ります。またRIETIの実証分析では、週55時間以上の労働で精神疾患のリスクが高まり、その悪影響は管理職でより顕著であることが示されています。
現代の管理職は、まさに地獄絵図のようです。現場も回し、人間関係も縫い、自分の心も保たなければなりません。誰もが等しく疲弊しています。
ではどうすればいいか。AIエージェントを本格導入するとどうなるか
出口の一つが、自分の仕事を機械的に終わらせる仕組みを作ることです。私が本格的に試しているのが、AIエージェント(Hermesのような自律型アシスタント)の運用です。
従来、管理職の残業の多くは「自分の頭の中で完結させている雑務」に消えています。日報のとりまとめ、トラブル対応の記録、週次報告のたたき台、過去の類似案件の検索。これらをすべて一人で抱え、深夜までかかっていました。
AIエージェントを導入すると、次のように変わります。
一つ、報告書や調査まとめの自動化です。トラブルの経緯を口頭や箇条書きで渡すだけで、AIが報告書のたたき台を作ります。私は内容を確認・修正するだけで済みます。
二つ、長期記憶の活用です。過去の対応履歴をエージェントに覚えさせておきます。同じトラブルが起きたとき、「前回はどう対応したか」を即座に引き出せます。年上部下への指示内容も、過去の反応履歴から「こう言えば通る」というパターンを蓄積できます。
三つ、定型連絡の自動化です。残業の申請、進捗共有、関係各所への連絡を、AIが下書きして私が承認する形にします。送る側の心理的ハードルが下がります。
AIが埋められない穴と、それでも減る重圧
ただ、人間関係の板挟みそのものをAIが解くわけではありません。年上部下への「どう指示を出すべきか」の判断、「帰れないのが悪い」と言われたときの返し方。そうした「人の問題」は、道具では解けません。
それでも、抱え込む情報の量が減ることで、自分の頭が空きます。空いた頭で、年上部下とどう向き合うかを考える余裕が生まれます。AIは孤独を完全に消すものではありませんが、その前段の「やらされている雑務」を減らすことで、考える時間を取り戻してくれます。
私が今のところ行き着いているのは、雑務はAIに任せて、自分は判断と人との対話に時間を使う、という一点です。残業している時間を少しずつAIに譲っていけば、年上部下との関係にも、自分の心にも、余白ができます。
管理職の孤独は、道具だけでは消せません。でも、道具で減らせる重圧があるなら、使わない手はありません。まずは自分が残業している時間を、AIエージェントに譲っていきたいです。
出典
- リクルートワークス研究所「管理職の多くがプレイング領域3割以上」(約9割がプレイングマネジャー、3割超えは85%)
- アルー株式会社「年上部下を味方にするマネジメント法」(年下部下への指示の躊躇に関する本音調査)
- 厚生労働省 パワハラ防止指針(「優越的な関係」は役職で決まらず、部下からの言動も対象)
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)「令和5年 労働安全衛生調査」(メンタルヘルス不調で1ヶ月以上休業した事業所は10.4%)
- RIETI「長時間労働が日本のメンタルヘルスに与える影響」(週55時間超で精神疾患リスク上昇、管理職で顕著)


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