オシロスコープは何のために使うのか
オシロスコープ(オシロ)は「見えない電気信号を目で見る」ための機械です。以下のような場面で使います。
- 故障調査:「この装置、なぜ動かないんだ?」→ 電源の波形を見るとリップル(ノイズ)が乗っていた、クロック信号が出ていなかった、などが一発でわかる
- 信号の品質確認:シリアル通信(RS-232C, I2C, SPI)の波形が正しい電圧レベルで出ているか、ノイズで誤動作していないかを確認
- タイミング測定:センサの信号に対して、PLCの出力が何ms遅れて出ているかなど、時間関係を正確に測定
- スイッチング電源の評価:電源が正しく立ち上がっているか、スイッチングノイズは適正か
- PWM信号の確認:モータ制御のPWM信号の周波数とデューティ比が正しいか
テスター(マルチメータ)が「今の電圧」という静止画なら、オシロは「電圧の時間変化」という動画です。
横軸(X)→ 時間、縦軸(Y)→ 電圧 のグラフをリアルタイムに表示します。
画面の基本構成
- TIME/DIV:横1マスの時間。1ms/DIVなら1マス=1ms
- VOLTS/DIV:縦1マスの電圧。1V/DIVなら1マス=1V
- GNDレベル(▼):0Vの基準線。画面上の▼マークの位置が0V
MHz(メガヘルツ)= 見える最大周波数
「100MHzのオシロ」は100MHzまでの信号を正しく表示できます。
選び方の目安:測りたい信号の周波数 × 5倍以上の帯域幅が必要です。
- Arduino / PLCの信号(数MHz)→ 50MHz〜100MHzで十分
- シリアル通信(I2C, SPI)→ 100MHz〜
- スイッチング電源のノイズ→ 100〜200MHz
安価なデジタルオシロ(2〜5万円)でも50〜100MHzはあるので、工場の故障調査なら十分です。
AC結合 vs DC結合(最初に迷うポイント)
| 設定 | 表示されるもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| DC結合 | 直流+交流の両方 | 「5V出てるか確認」など絶対的な電圧を見たい時 |
| AC結合 | 交流成分だけ(直流カット) | 「電源に乗ったノイズだけ見たい」時。小さいノイズを拡大できる |
覚え方: 全体の電圧を見たいならDC、ノイズやリップルだけ拡大したいならAC。
プローブの設定:×10が基本、×1は要注意
- ×10(テン):信号を1/10に減衰。高周波も正確に測れる。通常はこちら
- ×1(ワン):減衰なし。低電圧(1V以下)で使う。ただし周波数特性が悪いので高周波は不正確
プローブの補正(Probe Compensation)
プローブを初めてオシロに接続したら、できれば以下の調整をしてください。
- プローブのフックをオシロ本体の基準信号出力(1kHzの角波)に接続
- グランドクリップをGNDに接続
- オシロに表示された波形が「きれいな角形」になるよう、プローブ側面のトリマ(小さなドライバで回す)を調整
- 角が丸い(容量過多)→ トリマを時計回り、角がとがっている(容量不足)→ 反時計回り
厳密には必須ではありません。ただし以下の目安で判断してください:
- 低速な信号(数十kHz以下)なら、補正しなくても波形はそれなりに正しく見えます。気にしなくていいです
- 1MHz以上の高速信号や、立ち上がり波形(リンギング・オーバーシュート)を正確に見たい場合は、必ず補正してください。補正しないと実際と違う形が表示されます
トリガー(Trigger)= 波形を安定して止める機能
設定項目は2つだけ覚えればOK:
- トリガーレベル(LEVELノブ):何Vのところで波形を止めるか。ノブを回して波形の高さの真ん中くらいに合わせる
- トリガーエッジ:立ち上がり(↑)か立ち下がり(↓)か。通常は立ち上がりでOK
トリガーモードの使い分け
| モード | 動作 | 使う場面 |
|---|---|---|
| Auto | トリガがかからなくても掃引線が出る | 通常はこれ。信号がなくても時間軸が表示される |
| Normal | トリガ条件を満たさないと何も表示しない | 「まれにしか出ないノイズ」を捕まえたい時 |
| Single | トリガ1回で停止。その後は更新されない | 電源投入時の立ち上がりなど1回だけの現象を見たい時に |
測定の手順(毎回これでOK)
- プローブをCH1に接続し×10に設定
- プローブのフックを測定点に、グランドクリップをGNDに接続
- Auto Setボタンを押す(これだけで波形が出る)
- TIME/DIVで1〜2周期見えるように調整
- VOLTS/DIVで波形が画面の70%程度の高さになるよう調整
- LEVELノブでトリガ位置を調整して波形を安定させる
- 必要ならAC/DC結合を切り替え
- RUN/STOPで波形を止めて観察
安全に測定するための鉄則
- グランドクリップは必ず回路のGNDに接続する。浮いた状態で測ると危険
- ×10設定で測定するを基本とする。×1は低電圧専用
- AC100V/200Vの商用電源は必ず×10で、かつ絶縁トランス経由か差動プローブを使う
- オシロのGNDは大地(アース)と直結している。フローティング測定はできない
- 不安なときは測らない。まずは安全な低電圧回路(5V電源など)で練習する
覚えるべき用語(これだけ)
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 帯域幅(MHz) | 正しく表示できる最大周波数 |
| サンプリングレート | 1秒間に測定する回数(MSa/s,GSa/s)。帯域幅の5倍以上推奨 |
| TIME/DIV | 横軸1マスの時間 |
| VOLTS/DIV | 縦軸1マスの電圧 |
| DC結合 / AC結合 | 直流+交流を表示 / 交流だけ表示 |
| トリガ | 波形を止める基準点 |
| プローブ補正 | プローブの調整。高速信号の測定前にやる |
まとめ:最初に覚える5つ
- オシロは「電気信号の波形を目で見る」ための道具。故障調査・信号確認・タイミング測定に使う
- 横軸が時間、縦軸が電圧のグラフ。Auto Setを押せとりあえず波形は出る
- プローブは×10設定が基本。高速信号を正確に見るならプローブ補正を忘れずに
- DC結合で全体を見て、AC結合でノイズだけ拡大
- GNDは絶対に繋ぐ。浮かせて測らない
まずはArduinoの5V電源やPWM出力を測ってみましょう。実際に手を動かすのが一番の近道です。


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