PLCフィールドネットワークとは
工場の自動化(FA)において、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)同士や、PLCと各種機器(センサー、アクチュエータ、ドライブ、HMIなど)を接続するためのネットワークを「フィールドネットワーク」と呼びます。現場(フィールド)レベルの機器間でリアルタイムにデータをやり取りするための通信規格です。
主要なフィールドネットワークの種類
| 規格 | 開発元 | 開発時期 | 通信方式 | 最大速度 | 最大接続 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| CC-Link | 三菱電機(日本) | 1996年 | 専用ケーブル (RS-485ベース) | 10Mbps | 64局 | 日本で最も普及。CLPAがオープン化を推進。後継にCC-Link IE TSN(1Gbps) |
| EtherNet/IP | Rockwell Automation(米国) | 2001年 | 標準Ethernet (TCP/IP / UDP) | 100M〜1Gbps | 無制限 | 北米で圧倒的シェア。CIP(Common Industrial Protocol)でデバイス統合。安価な汎用ハードウェアが使える |
| PROFINET | Siemens(ドイツ) | 2003年 | 標準Ethernet | 100M〜1Gbps | 無制限 | 欧州で最多シェア。RT/IRTでモーション制御まで対応。OPC UA FXとの連携も強化 |
| EtherCAT | Beckhoff Automation(ドイツ) | 2003年 | 標準Ethernet | 100Mbps | 65,535ノード | 「オン・ザ・フライ」処理で超高速。モーション制御に強い。ETGが普及推進 |
| DeviceNet | Allen-Bradley(Rockwell/米国) | 1994年 | CANベース | 125〜500kbps | 64ノード | 低速だが信頼性高し。センサーレベルの接続に今なお現役 |
| CC-Link IE | 三菱電機(日本) | 2007年 | ギガビットEthernet | 1Gbps | 120局 | CC-Linkの後継。TSN対応版(CC-Link IE TSN)が最新 |
各規格には一長一短があり、導入するPLCのメーカーや、接続する機器、要求されるリアルタイム性によって最適な選択肢が変わります。
補足:「産業用オープンネットワーク」と「フィールドネットワーク」の違い
この記事で扱っているEtherCAT、EtherNet/IP、PROFINET、CC-Link IEなどは、「産業用オープンネットワーク」と呼ばれることもあります。「フィールドネットワーク」が「現場(フィールド)レベルのネットワーク」という使う場所・階層を指すのに対し、「産業用オープンネットワーク」は仕様が公開されていて特定メーカーに縛られないという性質を指します。
現代の主要なフィールドネットワークはほぼすべてオープン化されているため、実務上は同じ意味で使われることが多いですが、「フィールドネットワーク=必ずしもオープンではない」という微妙な違いがあります(昔の専用ネットワークはオープンではなかった)。この記事では両者をほぼ同義として扱います。
日本と海外の主流ネットワーク比較
| 地域 | 主流ネットワーク | 主な理由 |
|---|---|---|
| 日本 | CC-Link / CC-Link IE | 三菱電機のシェアが高い。国内FAメーカーがCC-Link対応 |
| 北米 | EtherNet/IP | Rockwell(AB)のシェアが高い。CIPの普及 |
| 欧州 | PROFINET / EtherCAT | Siemensの強い影響力。BeckhoffのEtherCATも急成長 |
ただし最近ではグローバル化に伴い「ビッグ3」(PROFINET、EtherNet/IP、EtherCAT)が世界市場の3分の2以上を占めています。CC-Link IE TSNもTSN(Time-Sensitive Networking)対応で巻き返しを図っています。
メーカーによる統一の流れ:トヨタのEtherCAT全面採用
フィールドネットワークの「統一」について、象徴的な事例があります。2017年、トヨタ自動車が生産ラインのフィールドネットワークとしてEtherCATを全面採用したのです(TechFactory記事より)。
トヨタのような大規模生産現場では、従来さまざまなネットワーク規格が混在していました。ラインごと、設備ごとに異なる規格を使っていると、
- データ統合が困難
- 保守要員が複数の規格を覚えなければならない
- 予備部品の在庫が増える
- 生産ラインの変更・拡張に手間がかかる
といった問題が発生します。トヨタはこれらを解決するために、EtherCATへの統一を決断しました。EtherCATが選ばれた理由は、高速性・高精度同期に加えて、ETG(EtherCAT Technology Group)によるオープンな管理体制と、多数の機器メーカーが対応していたことにあります。
このように、「自社工場のネットワークを一種類に統一する」という動きは、トヨタに限らず各メーカーで進んでいます。特に新設ラインではCC-Link IE TSNやEtherCATなどのEthernetベースの規格に統一するケースが増えています。
通信プロトコルの比較表
| 規格 | 物理層 | 最大速度 | 最大接続 |
|---|---|---|---|
| CC-Link | 専用(RS-485) | 10Mbps | 64局 |
| CC-Link IE | ギガビットEthernet | 1Gbps | 120局 |
| EtherNet/IP | 標準Ethernet | 100M〜1Gbps | 無制限 |
| PROFINET | 標準Ethernet | 100M〜1Gbps | 無制限 |
| EtherCAT | 標準Ethernet | 100Mbps | 65,535ノード |
| DeviceNet | CAN | 500kbps | 64ノード |
Ethernetベースの規格が増えてきたことで、ITシステムとの親和性も向上しており、工場のデータ収集(IIoT)を考える上でもフィールドネットワークの理解は欠かせません。
参考資料
- 「トヨタが全面採用を決めた「EtherCAT」とは何か 超速解説 EtherCAT」TechFactory(2017年2月17日)
https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1702/17/news002.html


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