機械の安全とは
自動機や設備を設計・導入する際に、必ず考慮しなければならないのが安全性です。日本では労働安全衛生法、国際的にはISO規格(機械安全の国際標準)で安全要件が定められています。
機械安全の考え方の基本は、ISO 12100に定義されており、以下の3ステップでリスク低減を図ります。
- 本質的安全設計:危険源を設計で除去する(例:危険部に近づけない構造にする)
- 安全防護:ガードやインターロック、ライトカーテンなどで防護する
- 使用上の情報:警告ラベルやマニュアルで注意喚起する
安全カテゴリー(ISO 13849-1)とは
ISO 13849-1(JIS B 9705-1)は、制御システムの安全関連部(SRP/CS)の安全性能を評価するための規格です。この中で、安全機能の構成(アーキテクチャ)をカテゴリーB、1、2、3、4の5段階に分類しています。
5つのカテゴリー比較
| カテゴリー | 特徴 | 故障時の振る舞い | 現場での使用例 | 対応PL |
|---|---|---|---|---|
| B(基本) | 基本要件のみ。単一故障で安全機能喪失 | 故障検出なし、機能停止 | 低リスクの補助装置 | a |
| 1 | B + Well-Tried部品の使用 | 故障確率は低いが、検出はしない | 信頼性の高い単純回路 | a〜b |
| 2 | 安全機能を定期的にテスト(自己診断) | テスト間隔で故障検出→停止 | ライトカーテン付き装置 | b〜c |
| 3 | 単一故障でも安全機能維持(冗長化) | 故障は検出され機能継続、蓄積防止 | 非常停止二重化、両手操作スイッチ | c〜d |
| 4 | 単一故障+故障蓄積も検出(最高レベル) | 複数故障でも即座に検出→安全停止 | プレス機、ロボットセル出入口 | d〜e |
カテゴリーB(基本)
機械の安全規格の基本要件だけを満たす最も低いレベル。単一故障が発生すると安全機能が失われる可能性があります。単純な危険がない装置向け。
カテゴリー1
カテゴリーBの要件に加え、Well-Tried(十分吟味された)安全部品を使用することが求められます。確立された安全原理に基づいて設計されます。
カテゴリー2
安全機能を定期的にチェック(テスト)することで、故障を検出できるようにした方式。テストインターバルは要求される安全レベルに応じて決まります。
カテゴリー3
単一故障が発生しても安全機能は維持される(冗長性を持つ)ことが要件。故障は蓄積せず、次回の要求時に検出される必要があります。1重故障には強いが、複数故障の蓄積は検出できないケースがあります。
現場例:両手操作スイッチや、非常停止の二重化回路。よく使われる構成です。
カテゴリー4
最高レベルの安全カテゴリー。単一故障はもちろん、故障の蓄積も検出して安全機能を維持します。複数の故障があっても安全機能が失われてはいけません。
現場例:プレス機の安全回路、危険なロボットセルの出入口インターロック。故障が発生したら即座に機械が停止し、修理するまで再起動できない仕組みが必要です。
パフォーマンスレベル(PL)との関係
ISO 13849-1では、安全カテゴリーに加えてパフォーマンスレベル(PL a〜e)という指標も使います。これは、以下の4つの要素から決定されます。
- カテゴリー(B,1,2,3,4):アーキテクチャの構成
- MTTFd(平均危険側故障時間):部品の信頼性
- DC(診断カバレッジ):故障検出率
- CCF(共通原因故障):冗長化した場合の共通要因対策
| PL | 1時間あたりの危険側故障確率(PFHd) | 対応するカテゴリーの目安 |
|---|---|---|
| PL a | 10⁻⁵ 〜 10⁻⁴ | B, 1 |
| PL b | 3×10⁻⁶ 〜 10⁻⁵ | 1, 2 |
| PL c | 10⁻⁶ 〜 3×10⁻⁶ | 1, 2, 3 |
| PL d | 10⁻⁷ 〜 10⁻⁶ | 2, 3 |
| PL e | 10⁻⁸ 〜 10⁻⁷ | 3, 4 |
安全カテゴリーの選び方(現場での判断基準)
実際の設計では、以下のざっくりした目安でカテゴリーを選びます。
- ケガをしても軽傷で済む → カテゴリーB または 1
- ケガをする可能性があるが、頻度は低い → カテゴリー2(自己診断付きでコスト抑制)
- 指や手を怪我する可能性がある → カテゴリー3(冗長化で信頼性確保)
- 死亡や重度の障害につながる → カテゴリー4(絶対に止める)
プレス機や大型ロボット設備はほぼカテゴリー4。AGV(無人搬送車)や半導体装置はカテゴリー3が標準です。カテゴリー2は比較的低リスクな装置でコスト優先の場合に選ばれます。
現場での安全カテゴリー選定のフローチャート
実際の設計では、リスクアセスメントを実施して必要な安全水準を決めます。
- 装置の危険源を洗い出す(切断、挟まれ、巻き込まれ、飛来など)
- リスクの大きさを評価(傷害の重篤度 × 発生確率 × 回避可能性)
- 必要なPLr(要求パフォーマンスレベル)を決定
- PLrを満たすカテゴリーと安全部品を選定
- 設計後にPLがPLr以上であることを検証
まとめ
自動機の設計において安全カテゴリーの理解は必須です。特にCategory 3と4は現場でよく要求されます。PLCの安全プログラム(セーフティPLC)を使えば、カテゴリー3〜4の要件をソフトウェアで実現することも可能です。
安全規格は年々厳しくなっています。設計の初期段階から安全カテゴリーを意識しておかないと、後から安全対策を追加するのは大変なので注意しましょう。
参考資料
- ISO 13849-1:2023 — Safety of machinery — Safety-related parts of control systems — Part 1: General principles for design(JIS B 9705-1 対応)
- ISO 12100:2010 — Safety of machinery — General principles for design — Risk assessment and risk reduction(JIS B 9700 対応)
- ISO 13849-2:2012 — Safety of machinery — Safety-related parts of control systems — Part 2: Validation(安全機能の検証・妥当性確認に関する規格)
- IEC 62061:2021 — Safety of machinery — Functional safety of safety-related control systems(電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の規格。ISO 13849-1と併用される)


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