工場の設備としてレーザー加工機を選ぶとき、何を基準にするか。結論から言うと「加工したいワークの材質」で決まります。その理由は、レーザーの波長と材料への吸収率にあります。この記事では、設備で使われる主なレーザーの種類を、波長と用途の一覧表で整理します。
レーザー加工の基本
特定の波長を持つ強い光をレンズで集光し、その熱エネルギーで材料を切断・溶接・マーキングするのがレーザー加工です。波長ごとに材料への吸収率が変わり、これが加工できる材質や性能の差になります。一般に波長が短いほど材料への吸収率は上がる傾向があるため、加工する材質に合わせてレーザーを選びます。
CO2レーザー
二酸化炭素ガスを発振媒質とする気体レーザーで、産業用レーザーの中でも歴史が長く広く普及している方式です。
- 波長:約10.6μm(遠赤外線域)。一般に使われるレーザーの中で最長クラスの波長です
- 得意:非金属(アクリル、木材、紙、ゴム、ガラス、皮革、樹脂)の彫刻やカット
- 不得意:金属。反射率が高く、この波長では吸収されにくいためです
- ワット数の目安:40〜120Wクラスで彫刻やカット。高出力では厚板金属の切断も可能です
- 注意点:発振管の定期交換が必要です。塩ビやテフロン加工材は有毒なガスが出るため加工できません
ファイバーレーザー
光ファイバー内で発振するレーザーです。ビーム品質が高くエネルギー効率が良いため、近年は金属加工の主流になっています。
- 波長:約1.06〜1.07μm(近赤外線域)。CO2の約10分の1の短さです
- 得意:金属(ステンレス、鉄、アルミ、銅、チタン)のマーキングや切断、および樹脂
- ワット数の目安:20〜120Wクラスで主にマーキング。kWクラスの高出力では厚板金属の高速切断が可能です
- 特徴:ビーム品質が高くエネルギー効率が良い、メンテナンス頻度が低い
- 不得意:ガラスなどの透過する素材は向きません
YAGレーザー
Nd:YAG結晶を発振媒質とする固体レーザーで、ファイバーレーザーと近い波長帯です。
- 波長:約1.06μm(近赤外線域)
- 得意:金属の精密加工。ビーム径を絞りやすく熱影響が小さいため、薄板の精密切断や微細穴加工、溶接、マーキングに向きます
- 用途例:SUS薄板の精密切断、φ0.1mmクラスの微細穴、型番・ロゴ・QRコードの刻印
UVレーザー
紫外線領域の短い波長を持つレーザーで、熱によるダメージを抑えた「コールドプロセス」に近い加工ができます。
- 波長:約355nm(紫外線域)。ファイバーレーザーの約3分の1の短さです
- 得意:熱に敏感な素材(樹脂、ガラス、フレキシブル基板、半導体パッケージ)の微細マーキング
- 特徴:光化学反応で素材を分解するため、熱影響が極めて小さい
グリーンレーザーとブルーレーザー
可視光の短波長レーザーです。赤外線を反射しやすい銅や金、アルミなどの高反射金属は、短波長の方が吸収されやすくなります。
- グリーンレーザー:波長約532nm。銅・金・シリコンなどの加工に有効で、半導体の微細加工やEVバッテリー部材で使われます
- ブルーレーザー:波長約450nm。銅や金の溶接に強く、EVバッテリーや電子回路の接合で注目されています
レーザーの種類と波長、用途の一覧
| 種類 | 波長 | 領域 | 得意な材質 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| CO2 | 約10.6μm | 遠赤外線 | アクリル、木材、紙、ゴム、ガラス、皮革、樹脂 | 非金属の彫刻・切断。高出力で厚板金属の切断 |
| ファイバー | 約1.06〜1.07μm | 近赤外線 | ステンレス、鉄、アルミ、銅、チタン、樹脂 | 金属の切断・溶接・マーキング |
| YAG | 約1.06μm | 近赤外線 | 金属全般(薄板SUS、チタン、銅、アルミ) | 精密切断、微細穴加工、溶接、マーキング |
| UV | 約355nm | 紫外線 | 樹脂、ガラス、フレキシブル基板、半導体パッケージ | 熱に敏感な素材の微細マーキング |
| グリーン | 約532nm | 可視光(緑) | 銅、金、シリコンなど高反射材 | 半導体・電子部品の微細加工、EVバッテリー部材 |
| ブルー | 約450nm | 可視光(青) | 銅、金、アルミなど高反射金属 | 銅・金の溶接、EVバッテリー・電子回路の接合 |
設備で使うならどう選ぶか
- 金属の切断やマーキングが主ならファイバー
- アクリルや木材などの非金属彫刻が主ならCO2
- 薄板金属の精密加工や微細穴が必要ならYAG
- 熱に弱い素材へのマーキングならUV
- 銅や金など高反射金属の加工ならグリーン・ブルー
- 判断の際は、ワークの材質とレーザーの波長が合うか(吸収されるか)を確認してから決めます
波長と吸収率さえ押さえれば、「この材質にはどのレーザーか」が自ずと見えてきます。加工機の導入を検討するときは、実際に試し加工をしてもらってから判断するのが確実です。

