電気回路の基本:なぜ今さら回路の話?
PLCやシーケンス制御の世界にいると、「回路なんてリレー回路が分かれば十分」と思いがちです。しかし、現場の装置にはセンサーの信号処理、アナログ入力のノイズ対策、電源の選定など、電気回路の基礎知識が必要な場面がたくさんあります。
ここでは、電気回路設計の「絶対に覚えておきたい基本中の基本」を紹介します。
1. オームの法則(Ohm’s Law)
電気回路の世界で最も重要な法則、それがオームの法則です。
V = I × R
- V:電圧(単位:V=ボルト)
- I:電流(単位:A=アンペア)
- R:抵抗(単位:Ω=オーム)
この式は以下のように変形できます。
電圧 = 電流 × 抵抗
電流 = 電圧 ÷ 抵抗
抵抗 = 電圧 ÷ 電流
現場で使う具体例
例1:センサーの消費電流から電源を選定
「24V電源に、消費電流50mAのセンサーを10台接続したい。電源の容量はいくら必要?」
50mA × 10台 = 500mA = 0.5A。これに余裕を見て1A程度の電源を選定します。
例2:長いケーブルでの電圧降下
「100m離れた場所に24Vのセンサーを設置。ケーブルの抵抗が往復で5Ωある。消費電流200mAの場合、センサーにかかる電圧は?」
電圧降下 = 0.2A × 5Ω = 1V。センサーには 24V – 1V = 23V しか届かない。
→ ケーブルが長いと末端で電圧が下がるため、太いケーブルを使う必要があることが分かります。
2. キルヒホッフの法則
第一法則(電流則:KCL)
「回路の任意のポイント(節点)に流れ込む電流の総和は、そこから流れ出る電流の総和に等しい」
つまり、どこかで電流が消えたり湧いたりしない、という当たり前だけど重要な法則です。
現場例:分岐回路で各負荷の電流を合計すると、元の電源線の電流になる。ブレーカーの選定で使います。
第二法則(電圧則:KVL)
「閉じた回路(ループ)内の電圧の総和はゼロになる」
電源電圧と各抵抗での電圧降下の合計が釣り合うという法則です。
3. 直列接続と並列接続
直列接続
抵抗を一列に繋ぐと、全体の抵抗は単純な足し算になります。
R = R1 + R2 + R3 (直列合成抵抗)
特徴:電流はどこも同じ。電圧は分圧される。
現場例:非常停止ボタンの直列接続。複数のボタンを直列に繋ぐと、どこか1つ押せば回路が切れる(安全回路の基本)。
並列接続
抵抗を並行に繋ぐと、全体の抵抗は逆数の和の逆数になります。
1/R = 1/R1 + 1/R2 + 1/R3 (並列合成抵抗)
特徴:電圧はどこも同じ。電流は分流される。
現場例:24V電源に複数のセンサーを並列接続。各センサーには同じ24Vが供給される。
4. 電力の計算
P = V × I
電力(P)= 電圧(V)× 電流(I)。単位はワット(W)。
現場例:電源の選定や、抵抗の発熱を計算するときに使います。抵抗に流す電流が大きすぎると、抵抗が発熱して焼損します。
例えば 100Ωの抵抗に 24V をかけると、電流は 24V / 100Ω = 0.24A = 240mA。電力は 24V × 0.24A = 5.76W → 1/4W(0.25W)の抵抗では焼けるので、十分な定格の抵抗を選ぶ必要があります。
ACとDCでW(ワット)の計算はどう違う?
ここまではDC(直流)の話でしたが、工場の設備はAC(交流)で動くものも多いです。ACとDCでは電力の計算方法が少し異なります。
| 電源 | 電力の計算式 | 補足 |
|---|---|---|
| DC(直流) 例:24Vセンサー、PLC電源 | P = V × I | シンプルに電圧×電流でOK。 位相のずれがないため |
| AC単相(交流) 例:100Vコンセント、照明 | P = V × I × cosθ | cosθ(力率)を掛ける必要あり。 モーターやトランスがあると 電圧と電流の位相がずれるため |
| AC三相(交流) 例:200Vモーター、工場動力 | P = √3 × V × I × cosθ | 線間電圧(V)× √3 が係数。 工場の大型モーターはこれで計算 |
ポイント:
DCはただの掛け算で済みますが、ACでは力率(cosθ)というものを考慮する必要があります。力率はモーターやトランスなどコイル系の負荷で低下し(0.7〜0.9程度)、ヒーターや白熱灯などの抵抗負荷では1.0に近くなります。工場のブレーカー選定や電源ケーブルの設計では、このAC電力計算が必須なので覚えておきましょう。
現場での注意:「AC200Vのモーター、定格電流10Aだから電力は2000Wだ!」とDCと同じ感覚で計算すると、実際の電力は 200V × 10A × 0.8(力率) = 1600W となり、思ったより少なくなります。逆に言うと、同じW数の機器でもACの方が電流が大きくなる可能性があるので、ケーブルやブレーカーの選定には注意が必要です。
まとめ:最低限覚えておくべきこと
- オームの法則(V=IR)は暗記必須
- 直列=電流一定、電圧は分圧。並列=電圧一定、電流は分流
- 電源選定は「総消費電流 × 1.5倍程度の余裕」が目安
- ケーブルが長いと電圧降下が起きる
- 抵抗には電力定格(W数)がある。超えると発熱→焼損
- ACの電力計算は力率(cosθ)を忘れずに
現場で「なんとなく電源が足りない」「ケーブルが熱い」と感じたとき、これらの基本法則を知っているかどうかで対応が変わります。ぜひ、オームの法則だけでも覚えておいてください。


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