はじめに はんだ付けとは何か
はんだ付けとは、「はんだ」と呼ばれる合金を熱で溶かして金属同士を接合する技術です。PLCの基板修理、センサーケーブルの接続、電子部品の実装など、現場の電気工作の基本スキルです。
本記事は初心者向けに「はんだ付けとはどういうものか」「どのような仕組みで接合されるのか」を概念的に解説します。実際の手順やコツの詳細は、別の記事で紹介します。
はんだ付けの仕組み ぬれと拡散
はんだ付けは、以下の2つの現象によって金属が接合されます。
ぬれ(濡れ)
溶けたはんだ(液体)が金属表面(固体)に流れ広がる現象を「ぬれ」と呼びます。ワックスをかけた車のボディは水滴が玉になって弾かれますが、ワックスがないと水が膜状に広がります。はんだも同様に、きれいな金属表面に流れ広がります。
拡散と合金層の形成
ぬれて広がったはんだは、接合する金属の表面に「拡散」し、互いの金属が混ざり合って合金層を形成します。この合金層ができることで、電気伝導性・機械的強度・放熱性が確保されます。
ポイントは、母材(接合する金属そのもの)は溶かさないことです。母材より融点の低いはんだだけを溶かして接合するため、電子部品や基板を壊さずに接続できます。
はんだとは 材料の話
はんだは、錫(スズ)を主成分とする合金です。接合する金属(母材)より融点が低い材料が選ばれます。
共晶はんだ(鉛入り)
錫63%・鉛37%の合金で、融点は183℃。液体から固体に変わる温度が一点に定まる「共晶」という特性があり、半溶融状態がほとんどないため、初心者でも扱いやすいのが特徴です。
鉛フリーはんだ
環境対応(RoHS指令)のため、現在の主流です。代表的な組成は錫96.5%・銀3%・銅0.5%で、融点は217〜220℃と共晶はんだより高くなります。融点が高い・濡れ性がやや悪いという特徴がありますが、接合強度は高いです。
はんだの形状
- 糸はんだ:線状のはんだで、中にフラックス(ヤニ)が内蔵されており、はんだごてでの手作業に使用します
- クリームはんだ:ペースト状。基板の量産実装(リフロー)に使用
- 棒はんだ:棒状。フローはんだ槽に使用
フラックスの役割 なぜ必要か
金属は空気中の酸素と反応して表面に酸化膜ができます。この酸化膜があると、はんだが金属に「ぬれ」ず、接合がうまくいきません。
そこで登場するのがフラックスです。はんだ付け促進剤とも呼ばれ、主に3つの役割があります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 清浄化作用 | 金属表面の酸化膜・異物を化学的に除去する |
| 酸化防止作用 | 清浄にした表面を覆い、再酸化を防ぐ |
| 表面張力低下作用 | 溶融はんだの表面張力を弱め、ぬれ広がりを促す |
糸はんだには「ヤニ」(ロジン)というフラックスが内蔵されているため、電子部品のはんだ付けでは通常はんだだけで足ります。ぬれが悪い場合は、別途フラックスを塗布します。
温度の重要性
はんだ付けの成否は温度に大きく左右されます。
- はんだの融点より低い:はんだが溶けず、ぬれない
- 高すぎる:合金層が厚くなりすぎて強度が低下。基板のパターン剥がれや部品の熱破壊の原因
- 適正温度:はんだが溶けてぬれ広がり、ほどよい合金層ができる
目安として、こて先温度は鉛フリーはんだで350℃前後、共晶はんだで300℃前後に設定し、加熱時間は3秒以内を目標にします。
必要な道具
はんだ付けに最低限必要な道具は以下の通りです。
- はんだごて:30W程度が扱いやすい。温度調節機能付きが理想
- はんだ:糸はんだ(線径0.8mm前後が汎用的)
- こて台:クリーナー一体型が便利。火傷防止に必須
- こて先クリーナー:濡れスポンジまたは真鍮クリーナー
こて先は使用前にクリーニングし、酸化膜を取り除くことで熱伝導が安定します。
良いはんだ付けの3要素
良いはんだ付けには、以下の3つが揃っていることが条件です。
- 接合面が清浄:酸化膜や汚れがない(フラックスで処理)
- 温度が適正:はんだの融点より高く、高すぎない
- はんだ量が適正:接合部の大きさに合った量(少なすぎると強度不足、多すぎると隣とブリッジ)
仕上がりは、はんだが良く流れて「裾を引いている」形状(フィレット)で、表面が滑らかで光沢があるのが良い状態です。
まとめ
はんだ付けとは、はんだを熱で溶かして金属同士を接合する技術です。「ぬれ」と「拡散」によって合金層を形成し、電気的・機械的に接続します。
- はんだ = 錫を主成分とする合金(共晶はんだ183℃・鉛フリー217〜220℃)
- フラックス = 酸化膜除去・再酸化防止・ぬれ促進の3役割
- 温度 = 融点より高く、高すぎない適正温度が重要
- 母材は溶かさない(ろう接の一種)
本記事では概念編として、はんだ付けの仕組みを解説しました。実際の手順、コツ、失敗パターン、安全上の注意などは、別の記事で詳しく紹介します。


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