シリアル通信とは
シリアル通信は、データを1本の信号線で1ビットずつ順番に送る通信方式です。パラレル通信(複数本の線で同時に送る方式)に比べると速度は遅いですが、配線が少なくて済むため、長距離通信や産業機器での接続に広く使われています。
PLCや測定器、モータドライブ、バーコードリーダなど、現場の機器の多くがシリアル通信で接続されています。
主なシリアル通信規格
| 項目 | RS-232C | RS-422 | RS-485 |
|---|---|---|---|
| 制定年 | 1969年(EIA) | 1975年 | 1983年 |
| 通信方式 | 全二重 | 全二重(4線式) | 半二重(2線式) または全二重(4線式) |
| 伝送方式 | シングルエンド (±12V) | 差動伝送 (ツイストペア) | 差動伝送 (ツイストペア) |
| 最大距離 | 約15m | 最大1,200m | 最大1,200m |
| 最大速度 | 115.2kbps | 10Mbps(距離に依存) | 10Mbps(距離に依存) |
| 接続形態 | 1:1 (ポイントツーポイント) | 1:N (最大10台) | N:N (最大32台) |
| 配線本数 | 3本以上 (TX, RX, GND) | 4本 (TX+, TX-, RX+, RX-) | 2本(半二重) または4本(全二重) |
| 特徴 | PCのCOMポートでおなじみ。 電圧が高くノイズに強いが距離が短い。 現在はUSB-シリアル変換が主流 | 差動伝送でノイズに強い。 長距離・高速通信が可能。 マスター1台に対し複数スレーブ | マルチドロップで 複数機器をバス接続可能。 CC-Linkの物理層としても採用。 最も普及しているシリアル規格 |
| 現場での使われ方 | PLCプログラム書込、 タッチパネル接続、 測定器データ取得 | PLC間ネットワーク、 リモートI/O接続、 長距離計測システム | 複数PLCのバス接続、 センサーネットワーク、 CC-Link、MODBUSなど |
3つの規格をざっくりまとめると、「RS-232Cは近距離・1対1」「RS-422は長距離・1対N」「RS-485は長距離・N対Nでバス接続」という違いがあります。現場でよく使われるのはRS-485で、CC-LinkやMODBUSといった上位のフィールドネットワークの物理層としても採用されています。
変換アダプタについて
最近のパソコンにはシリアルポート(COMポート)が付いていないことがほとんどです。そのため、各シリアル規格に変換するためのアダプタを使って接続します。
| 変換アダプタ | 用途 | 価格帯 |
|---|---|---|
| USB-シリアル(RS-232C)変換 | PCとPLCや測定器を1対1で接続。 PLCのプログラム書込みで一番よく使う。 | 500〜3,000円 |
| USB-RS-422 変換 | PCをRS-422機器に接続。 長距離・高速通信が必要な場合。 | 2,000〜5,000円 |
| USB-RS-485 変換 | PCをRS-485バスに接続。 複数台のPLCやセンサーと通信する場合。 | 2,000〜5,000円 |
| RS-232C ⇔ RS-485 変換 | 既存のRS-232C機器をRS-485バスに接続。 距離延長や複数台接続に。 | 3,000〜8,000円 |
USB-シリアル変換アダプタは秋葉原やAmazonで安く買えますが、格安品だとPLCとの相性問題や通信不安定になることがあるので、信頼できるメーカー品(FTDIチップ採用など)を選ぶのがポイントです。現場用の工具箱に1セット入れておくと、トラブルシュートで重宝します。
全二重と半二重の違い
この概念はシリアル通信で非常に重要です。
| 方式 | 説明 | 例え | 例 |
|---|---|---|---|
| 全二重 (Full Duplex) | 送信と受信を同時に行える | 電話(話しながら聞ける) | RS-232C, RS-422 |
| 半二重 (Half Duplex) | 送信と受信を交互に行う | トランシーバー(押してるときは聞けない) | RS-485(2線式), CC-Link |
| 単信 (Simplex) | 一方通行のみ | ラジオ放送 | 温度センサ→PLC(一方方向) |
シリアル通信の現場での注意点
終端抵抗
RS-422/485では、ケーブルの末端で信号が反射するのを防ぐため、バスの両端に終端抵抗(100〜120Ω)を取り付ける必要があります。これを忘れると、通信エラーが多発します。
なぜ終端抵抗がないと通信エラーが起きるのか?
RS-422/485の信号は電気の「波」(電圧の変化)です。この波がケーブルの末端に到達すると、行き場を失って跳ね返ってきます(信号反射)。特にRS-422/485は高速(最大10Mbps)・長距離(最大1,200m)で使うため、この反射の影響が顕著に出ます。
反射した信号が本来の信号に重なると、波形が歪みます。受信側は歪んだ波形から「0」と「1」を判別できなくなり、ビット誤り → 通信エラーが発生します。終端抵抗(100〜120Ω)は、ケーブルの特性インピーダンスに合わせた抵抗を両端に取り付けることで、信号エネルギーを熱に変えて吸収し、反射を抑える役割を果たしています。
イメージとしては、壁にボールをぶつけると跳ね返ってきますが、壁全体をスポンジに変えると跳ね返りがなくなります。終端抵抗はこの「スポンジの壁」の役割をしているわけです。現場で「ケーブルを長く延ばした途端に通信エラーが出た」というときは、まず終端抵抗の有無を確認しましょう。
バイアス抵抗
無通信時に信号線の電位が不定になるのを防ぐために、バイアス抵抗(プルアップ/プルダウン抵抗)が必要な場合があります。
シールドとアース
ノイズの多い工場では、シールド付きツイストペアケーブルを使用し、シールドは片側のみアースするのが基本です。
まとめ
| 規格 | 通信方式 | 最大距離 | 最大速度 | 接続形態 |
|---|---|---|---|---|
| RS-232C | 全二重 | 約15m | 115.2kbps | 1:1 |
| RS-422 | 全二重 | 1,200m | 10Mbps | 1:N |
| RS-485 | 半二重(標準) | 1,200m | 10Mbps | N:N |
PLCのフィールドネットワークの物理層としても、RS-485は今なお現役で使われています。Ethernetが主流になりつつあるとはいえ、シリアル通信の知識はFAエンジニアとして必須のスキルです。


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