ツール概要
PuTTYは、Windows上で動作するフリーのSSH・Telnetクライアントです。シリアル通信やrawソケット接続にも対応しており、サーバ管理やネットワーク機器の設定において長年にわたってデファクトスタンダードとして使われています。
現場エンジニアにとって、リモートサーバへのSSH接続は日常業務の基本です。PuTTYはインストールが簡単で、ポータブル版も提供されているため、USBメモリに入れて持ち運ぶことも可能です。SSHの鍵管理機能(Pageant)、ファイル転送用のpscp/psftpも附属しており、サーバ管理の基本セットとして非常に信頼性の高いツールです。最新版0.84が2026年5月にリリースされており、セキュリティ修正も継続的に行われています。
シリアル通信での使い方
工場の現場でPuTTYが特に重宝するのがシリアル通信(COMポート)です。
- PLCやルータのシリアルデバッグ:制御盤内のPLCや産業用機器にCOMポート経由で接続し、デバッグ出力を確認したり設定変更したりできます。
- シリアル出力機器のモニタリング:RS-232Cでデータを流し続ける測定器やセンサの出力をリアルタイムに表示できます。例えば「単方向でデータを垂れ流してくる装置の出力状態を確認したい」という場面で、ノートPCにCOMケーブルを繋いでPuTTYを起動すれば、流れてくるデータをそのまま確認できます。ログをテキストファイルに保存して後から解析することも可能です。
- 機器の状態確認:「この装置、シリアルにエラーログを吐き出してるんだけど中身が見えない」という場面でも同様に使えます。
シリアル通信はボーレート(9600bpsや115200bpsなど)・データビット・パリティ・ストップビットの設定を機器に合わせる必要があります。PuTTYはこれらの設定を保存できるので、同じ機器に何度も接続する場合はセッションとして保存しておくと便利です。
シリアル通信専用なら「SerialDebugger」という選択肢もある
PuTTYでもシリアル通信はできますが、あくまでSSH/Telnetクライアントにシリアル機能がオマケで付いているような位置づけです。シリアル通信に特化するなら、SerialDebugger2 / SerialDebugger3(シリアルデバッグツール)というフリーソフトもあります。
こちらはシリアル通信の送受信データの確認に特化しており、受信データのHEX表示やファイルへのログ出力がより直感的に行えます。「とにかくCOMポートからの垂れ流しデータを見たい」「バイナリデータを確認したい」という用途ではPuTTYより使いやすいかもしれません。
SerialDebugger2はVectorで公開されているフリーウェアで、Windows 10/11でも動作します。ただし開発がやや停滞気味で、最新のSerialDebugger3ではUDP/TCP通信にも対応しています。
使い分けの目安:
- SSH接続+たまにシリアル → PuTTY(1つで済む)
- シリアル通信がメイン → SerialDebugger(表示・ログ出力が便利)
- PLCのデバッグ・機器設定 → メーカー純正ツール(GX Works等)を使うのが確実
なぜPuTTYなのか
Windows 10/11ではOpenSSHクライアントをオプション機能として追加できますが、初期状態では入っていません。Telnetに至ってはWindows 7以降は標準で搭載されていません。それでもPuTTYが使われ続けるのには理由があります。
- シリアル通信(COMポート)対応:工場の現場ではPLCのデバッグやルータの初期設定にシリアル接続が必須。Windows標準のSSHクライアントではシリアル通信ができないため、PuTTYが活躍します。
- Telnet対応:古いネットワーク機器や産業用機器の設定にはまだTelnetが必要なケースがあります。
- セッション保存機能:接続先のホスト名・ポート・認証方式を保存しておけます。現場で複数のサーバを使い分けるときに便利です。
- Pageant(SSHエージェント):公開鍵認証の鍵を一元管理でき、複数セッションで使い回せます。
- ポータブル版:業務PCにインストール権限がなくても、USBメモリから実行できます。
ライセンス
MITライセンスで配布されています。個人利用・商用利用ともに完全無料。再配布や改変も自由です。
こんなところに注意
- UIが古い:1990年代からほぼ変わっていないクラシックな見た目。慣れれば問題ないが、初見だと戸惑う。
- Windows専用:macOSやLinuxには対応していない。Linux上で使いたい場合は代替としてOpenSSHクライアントやTera Termなどを使う。
- Unicode対応が不完全:日本語を含む文字化けが発生することがある。ロケール設定で回避できる場合もあるが、Windows Terminal + OpenSSHの方がモダンな環境では安定する。
- 更新頻度が低い:0.84が2026年5月にリリースされたとはいえ、脆弱性が見つかってから修正リリースまで時間がかかることがある。
FAエンジニア視点での実用ポイント
工場でPuTTYを使うシーンは主に以下の通りです。
- PLCのシリアルデバッグ:三菱MELSECやキーエンスKVシリーズのデバッグにCOMポート経由で接続。ボーレートやパリティの設定をセッションに保存しておくと毎回設定しなくて済む。
- シリアル出力機器の監視:RS-232Cでデータを垂れ流しで出力する測定器や重量計、バーコードリーダの出力をリアルタイムに受信。PuTTYの「ログ出力」機能を使えば受信データをそのままテキストファイルに保存でき、後からExcelやPythonで解析するのに便利。
- 機器の初期設定・復旧:ネットワーク機器や産業用コントローラのシリアルコンソールからIPアドレス設定や工場出荷状態からの復旧作業が行える。
- 産業用ルータ/スイッチの設定:コンソールポートからシリアル接続して初期設定。Ciscoや初心者向け機器のコンフィグ投入。
- Linuxサーバ管理:工場内のデータ収集サーバ(Ubuntu Server等)へのSSH接続。Pageantで鍵管理しておけばパスワード入力不要。
- トンネリング(ポートフォワーディング):工場ネットワークから外部に出られない機器へのアクセスにSSHトンネルを使う。PuTTYの設定画面で簡単に設定できる。
使ってみた感想
言わずと知れた定番ツールで、この手の仕事をしている人ならほぼ全員が一度は使ったことがあるでしょう。私自身、現場のPLCデバッグでシリアル接続するために日常的に使っています。COMポートの設定画面が直感的ではないので、最初は戸惑うかもしれませんが、セッション保存機能を使いこなせばかなり快適です。
とはいえ、最近はWindows Terminal + WSL2上のOpenSSHクライアントに移行する人も増えています。特にUnicodeやTrue Color対応を考えると、モダンな環境の方が快適です。しかし現場のPCは未だにWindows 10の古い端末だったり、インストール権限が制限されていたりするケースが多く、そういう環境ではポータブル版PuTTYが変わらず重宝します。
インストール方法
- 公式サイト(putty.org)からインストーラをダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラ(.exe)を実行し、セットアップします。
- インストール後、スタートメニューからPuTTYを起動します。
- ポータブル版を使いたい場合は、公式サイトから「putty.zip」をダウンロードし、任意のフォルダに展開して実行するだけです。
LinuxやmacOSで使いたい場合は、以下の代替ツールがおすすめです。
- Tera Term(Windows向け・PuTTYより日本語対応が良好)
- Windows Terminal + OpenSSHクライアント(Windows 10以降、オプション機能として追加可能)
- MobaXterm(Windows向け・タブ型マルチセッション)
動作環境
対応OS:Windows 10/11(64bit/32bit)。Windows Server 2016以降も対応。LinuxやmacOS版は提供されていませんが、Wine経由での動作報告はあります。
最新版:v0.84(2026年5月リリース)


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